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 中国、都市型現代農業の拡大に本腰

2012年5月14日

「第12次5ヵ年」期も2年目に入り、各分野で国家規画(計画)などが続々と公表されている。その中でも、とくに目立つのが農業分野の規画の多さと内容の幅広さだ。
主なものをあげると、「農産品加工業『第12次5ヵ年』発展規画」、「全国農業機械化発展『第12次5ヵ年』規画」、「馬鈴薯加工業『第12次5ヵ年』発展規画」、「『第12次5ヵ年』農作物ワラ総合利用実施方案」、「飼料工業『第12次5ヵ年』発展規画」、「全国現代農業発展規画(2011-2015年)」、「全国農業・農村経済発展『第12次5ヵ年』規画」、「農業国際合作発展『第12次5ヵ年』規画」、「全国農民教育培訓『第12次5ヵ年』発展規画」、「農業貿易促進規画(2011-2020年)」、「『第12次5ヵ年』農業・農村科学技術発展規画」、「農産品品質安全発展『第12次5ヵ年』規画」などがある。分野別では農業関係が一番多いかもしれない。このことは、とりもなおさず、中国政府が農業問題をそれだけ重視している表れに他ならない。

農業問題は、農村問題と絡めて議論されるケースが多いが、農業は別に農村に限ったことではない。中国では近年、「都市型現代農業」に対する関心が高まってきている。
国務院が2012年1月13日付で各省などの関係機関に通知(公表は2月13日)した、「全国現代農業発展規画(2011-2015年)」は、東部沿海地区や大都市近郊等の比較的条件に恵まれた地区で率先して農業の現代化を実現するとの目標を掲げた。

また同規画は、直轄市や省都クラスの大都市近郊を「率先実現区域」として重点区域に位置付けたうえで、こうした区域で現代農業の構築を加速することが、現代農業を全国規模まで拡大するうえで重要な意義を持つとの認識を示した。

同規画では、沿海地区以外の直轄市、省都クラスの都市を「大都市近郊多機能農業区」と指定し、「第12次5ヵ年」期間中に「菜籃子」プロジェクト(都市住民に肉や野菜、卵などの副食品を供給するための一連の政策)を推進し、大都市近郊でこうした製品を生産するための用地を確定するとともに、野菜や果物、花卉といった効率の高い園芸産業や家畜・家禽・水産業を発展させ自給率を高める方針を打ち出した。

そうしたなかで中国農業部は4月26、27の両日、上海で全国都市現代農業現場交流会を開催した。都市型現代農業をテーマとして大都市で開催する現場交流会としては初の催しとなった。直轄市など50都市から農業行政部門の責任者が出席した。

農業部の韓長賦部長は、大・中都市において都市型現代農業を発展させることによって農産品の有効供給と市場の安定が保障されるだけでなく、都市部の生態居住環境が改善され、農民の就職と増収を促進すると指摘。大・中都市の農業部門が都市型現代農業を発展させることの重要性について認識する必要があると強調した。

同部長によると、都市型農業を確立することで「菜籃子」産品の重要な供給地区はもちろん、農業現代化モデル地区、農業先進生産要素集積地区、農業多機能開発模範地区、農村改革先行地区ともなり、都市部における主要農産品の供給保障能力と農民の収入レベルを大幅に引き上げることにつながる。

同部長は、大・中都市の農業部門関係者に対して、都市型現代農業の発展に対応した活動メカニズムを着実に構築するとともに、都市型現代農業の発展を都市の発展や土地利用等の全体計画の中に積極的に盛り込み、農業発展方式の転換を推進するよう求めた。

中国では、全国36ヵ所の大都市の耕地面積は全国の9分の1、また野菜の生産量は6分の1を占めている。こうした大都市は、その他の農業区と比べて農業インフラが整備されているだけでなく、人材資源や情報量、資金が豊富で科学技術が発達しているという特徴を持っており、都市型現代農業の発展に有利な条件を備えている。

すでにいくつかの都市では都市型現代農業の発展に向けて具体的に動き出している。北京市農村工作委員会は2005年11月、「都市型現代農業の発展を加速することに関する指導意見」を公表している。成都市の市政協農業・地方政協連絡委員会も今年2月、「農業科学技術のイノベーションを強化し都市型現代農業の発展を推進する建議」を行った。
上海市も都市型現代農業の拡大を視野に入れている。同市の「第11次5ヵ年」期間(2006~2010年)中のインフラ投資は、都市部が7に対し郊外は3であったが、「第12次5ヵ年」期には都市部3に対して郊外を7に拡大することを計画している。

上海市はここ数年間、農業の規模拡大につとめるとともに専業農民の育成をはかった。その結果、郊外では博士や修士をもった農民が大幅に増加し都市型現代農業を牽引している。また、市内の産業の利点を活かし、農業機械の導入、消化、吸収を加速している。

都市型現代農業は、中国農業の新たな可能性を引き出すかもしれない。

窪田 秀雄 )

上海孫橋現代農業園区番茄自動制御温室

外国の自動制御温室技術を導入し、自動制御によって温室内の温度や湿度、日照、二酸化炭素等をコントロールしている。現在、温室でのピーマン生産量はm3あたり15~20kgまたキュウリの生産量は45kg以上に達している。
出典:中国農業部ホームページ(http://www.moa.gov.cn/zwllm/zwdt/201204/t20120428_2614230.htm

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